2010年12月1日水曜日

急激な冬、そして日常

 急に吹雪いている。昨夜から家の外で竜巻が舞っているような不気味なうなり声が絶えない。


今朝外に出ると、あまりの寒さに皮膚がピリピリと痛んだ。

子供達も防寒具を重装備して学校へ行ったが、まだ暗いうちに出すので心が痛む。


10時に真ん中の息子が駆け戻ってくる。家の前を走りすぎて建物に飛び込んだのが聞こえた。

何事かと思う。


今日は日曜日のコンサートのプローべがあったのだが、楽器を忘れたと言う。

しかもこのマイナス10度の極寒の中、ジャケットも忘れたようで、薄いプルオーバーひとつで顔を真っ赤にしているではないか。

馬鹿さ加減は母親似であろう。

私もレッスンに楽器を持たずに行って、先生が来るまで一時間も待たされても気づかず、やっと先生に楽器は?と言われて気がつくほどの馬鹿であった。

まあ、それだけ緊張が激しく思考が回らなかったというのもあるが、言い訳にはならぬ。


息子を学校に送り届けてFiatに向かう。

いい加減にスノータイヤに交換しないとならない。

北東へと進むと、どんどん未来都市のように旧東独時代の団地が聳え立つ光景に突入してゆき、住人の姿も様変わりする。

この未来都市のような、タイル張りの団地郡の無機質さは、どんよりとした灰色の空と重なって、なんとももの悲しい。


しかしFiatは、どこへ行ってもFiatであり、サービスもなかなかでコーヒーも美味しく、私的にはリラックスゾーンである。

自動車修理工のマイスターと車に関して相談して、その後コーヒーを頂いて、真っ赤なソファにどっかり座り、雑誌をぱらぱらめくり待つこと一時間半で、タイヤ交換とウィンターチェックが済んだ。


Fiatの目の前に、新しいIKEA Lichtenbergができていた。

13日オープンである。電気はついていたが、まだ開店ではなかったようだ。


ベルリンにはIKEAが3店舗あるのだが、どれも西側で私には、距離は遠くなくても、交通量が多く、行くのが面倒くさかった。

これから、またIKEAに通ってしまう予感。近いだけでなく、街の中心を通り抜けて西へ行く必要がないだけに、スイスイと行けてしまう。


運転席前のKOMBIパネルのLDC表示が壊れて読めなくて不便だった。

相談して見てもらった結果、KOMBIを交換する必要があるという。おかげさまで3年間の保証期間があるため、ただで交換してもらえる。

来週の木曜日に予約を取った。

市電が目の前から出ており、それを使用すれば何のことはない、10分ぐらいでALEXに着き、そこから私の家までは二駅なのだが、仕事もある日なので代替車があるか聞いてみると、Cinquecento!!があいていると言う。26ユーロで一日中のり放題。

即予約。来週木曜日はCinquecento乗れると思うと、なかなか嬉しい。仕事前にどこかへ出てしまおうか。



帰宅して、とっくに入っているはずの仕事がまだないので、問い合わせる。

親会社が今回の案件を取り逃したという。

クリスマス前の、大きな収入がぼつった。

FIATにいる間に、もうひとつの専属会社からTELがあり、仕事をしてくれ、どうしてもと押された。

仕方ないので、後で電話して、そちらの仕事をとることにする。

西側なので、行くのが面倒なのと、レイアウトの仕事なので、あまり得意でないグラフィックソフトを使用するため疲れる。が、クリスマスは思春期の子供を二人も抱え、何しろお金がかかる。いくらでも稼がねばならない。


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ろうそくと灯す機会がぐっと増えた。

ライトニングが美しい季節でもある。

個人的には、クリスマスフィーバーが大嫌いであるが、陰鬱な冬の天気につられて、家にいる機会が多くなり、内向的に色々と自分と向き合うことも多くなる。

本を読んだり、音楽を聴いたりするときに、陰鬱な環境は、感受性の感度をぐっと高めるということも、一応心理学的には実証されているらしい。


自分もそれなりに、それを実感している。


そういう冬が嫌いではない。

クリスマスフィーバーするよりは、キリストの誕生によって、人間の何が変わり、今でも何が変わらず、モラルとは倫理とは何か、生きるとは何か、信ずるとは何か、と言ったような、普段は語るのも気恥ずかしいようなことを、静かにしかし直接的に提議してみたいという気もする。

子供たち、特に息子たちとそんなことを語りたい。


そう言えば、真ん中の息子が、PSPでネットをしているうちに、HIROSHIMAの原爆について知るきっかけを持ち、あらゆる情報を集めて学習したと言う。

はだしのゲンや、蛍の墓などの話から、USAのモラル、原爆投下というものの是非などについて語った。

自発的に興味をそそられ、自分でその興味から知識を広げてくれる息子は、好奇心の強い私に似ているなと思うと同時に、こういうマルチ人間を一人前にするのこそ、至難の業だと、今から心している。


一つのことしかできない人間が一番強い。


そういうわけで、日曜のコンサート用の黒シャツと靴がないというので、息子をピアノの稽古に迎えにいってから買い物に行く。

仕事がぼつったので、普通に母親をしている。

嫌ではない。楽しい。が、金を稼がない不安は大きい。

やはり、春先には社員にしてくれるという話を具体化させようと思う。

フリーだと穴があくこともあるが、社員ならない。



では、吹雪の中へ。