2010年11月10日水曜日

夜中に焼くケーキ

夜中に、キッチンへ入った。

そっと小さなCDプレイヤーのスイッチを入れた。

美しいピアノの音色が聞こえてくる。


オーブンの火をつけて、私は卵とバターを取り出した。

ひたすら、ケーキを焼いていたのだ。


シンと静まり返った夜中に、私は末っ子のケーキ焼いた。

そして、虚しかった。

どこまでも虚しいので、ケーキ作りに専念した。

出来上がったケーキは、とても良いにおいがした。

レモンケーキが良いというリクエストだったのだ。

バターがたっぷりと入っており、息子も喜ぶに違いない。


それにしても、ケーキを焼くという暖かい作業に、喜びを感じられずに、ひたすら孤独感を押し付けられていたtのはなぜだろうか。


こんなケーキでは愛情が通じないと言う恐怖かもしれない。

一生懸命やるだけでは意味がないのだ、と言う恐怖であるかもしれない。


それでもケーキを焼かない誕生日はない。



明日、紅茶と一緒に、この甘いケーキを口に含んだときは、おそらくもっと具体的な悲しみが襲ってくるようで、陰鬱な気持ちを抱えつつ就寝する。


明日起きたら、また違う一日が始まる。

ケーキを焼いた人は、他人になるかもしれない。


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